十和田八幡平国立公園にある十和田湖では、毎年7月第3週目の海の日を含む3連休に、「十和田湖湖水まつり」を開催してきました。
十和田湖の湖上に打ちあがる花火は、カルデラの中に響き渡る迫力と湖に映る光の豪華さで、
夏の観光シーズンの幕開けとして多くの来場者でにぎわってきましたが、
第55回目を迎えた令和2年(2020年)は、新型コロナウイルス感染症の影響で、開催中止の瀬戸際に追い込まれていました。
しかし、観光の灯、希望の灯を絶やすまいと、アイデアを出し合った末、
「十和田湖湖水まつり スカイランタンに願いを込めて」を8月28日、29日、30日の3日間、開催しました。
開催にあたっては、スカイランタン購入者、同行者、一般観覧者すべて、チケット販売サイトで事前予約する方式を採用し、
入場者数のコントロールや、来場者情報の把握、予定人員に合わせたゾーニンなど、コロナ対策とイベント運営の両立に苦心しました。
使用したスカイランタンは、風船にLEDライトを内蔵、ヘリウムガスを充てんし、
和紙をかぶせ、糸をつけて空に浮かべ、完全回収する環境に配慮したもの。
十和田神社入り口に願い事記載所を設け、思い思いに願い事を書いた短冊をスカイランタンに貼り付けました。
また併催行事として、とわだこマルシェや子どもたちのための、スカイランタンの手元に付けるビーズアクセサリー作りと風船ぬり絵もおこない、
楽しんでもらえるようにしました。
スカイランタンの打ち上げまで、十和田湖の自然を満喫したり、ゆったりとした時間を楽しむ人もいました。
日が沈むのを待ちます。
スカイランタンの灯りの色が徐々に見え始めてきます。
いよいよスカイランタンの打ち上げの時間がきます。
優しいほのかなオレンジの灯りと、医療従事者への感謝を表すブルーのスカイランタンが一斉に湖岸に打ちあがると、
自然と拍手が沸き起こり、雲間から照らす月明かりと、ランタンの優しい明かりが湖水に揺らめき、
その美しさと、世界に向けてコロナの収束と幸せを願う思いが一つになり、大きな感動が静かに参加者を包みました。
参加者の中には、涙を流す方もおり、十和田湖はいにしえからの「カミの山」として信仰を集めてきましたが、
あらためて、「祈る、願う」場所であることを感じました。
3日間の来場者数は3,385人。昨年の12%あまりですが、久々の観光客の姿が、湖畔事業者の大きな励みになりました。
インスタグラムの投稿に
「とても幻想的できれいでした」「ラプンツェルで見た景色をまさか目の前で見られるなんて」
「今年は浴衣を着られないと思っていたから、着られてよかった」
「疲れも何もかも浄化された感じ」などたくさん感想が書き込まれていて、主催者側の方が感謝、感激しました。
参加者データを見ると女性の方が15ポイントほど多く、
中でも30代、40代の女性が多く、「花火よりもこっちが良い」「十和田湖があんなにもきれいだったなんて」と、
本来の十和田湖の美しさの評価につながったことや、これまで取り込めていなかった層の参加、
厳しいコロナ禍の中でイベントができたことは、十和田湖の今後の観光に大きな希望となりました。
開催期間中、どこも強く雨が降っていましたが、十和田湖畔休屋は、スカイランタンの時間が近づくと3日間とも晴れて、予定通りスカイランタンを上げることができました。雨の中クルマを走らせ、お越しいただいた皆さま、ご支援いただいた皆さまに心から感謝申し上げます。
towada travel 特集「願いを込めた「スカイランタン」十和田湖に映る」、ご興味を持っていただけましたでしょうか。
ぜひ、いろんな方に足を運んでいただけたら嬉しいです。
写真:(一社)十和田奥入瀬観光機構
文:山本 隆一(やまもと りゅういち)